居抜き店舗が売れない理由というと、
「立地が悪かったのでは?」
「家賃が高かったのでは?」
「造作価格が高すぎたのでは?」
「内装や厨房設備が古かったのでは?」
と考える方が多いと思います。
しかし、実際の居抜き売却では、
店舗そのものとは別の理由で売却が進まなくなることがあります。
今回ご紹介するのは、名古屋市中区栄2丁目にあった居酒屋の不成約事例です。
立地が極端に悪かったわけではありません。
開業から約2年。
店舗はビル2階、約18坪。
条件次第では居抜きで買主を探せる可能性のある店舗でした。
ところが最終的には、
約4カ月募集しても居抜き売却が成立せず、スケルトン返却。
さらに、
原状回復費として約250万円
が必要になりました。
今回の大きな問題は、店舗そのものよりも、
共同経営していた2人の意見が最後までまとまらなかったこと
でした。
居抜キングが実際の不成約事例をもとに、共同経営の店舗を居抜き売却するときに注意したいポイントを解説します。
今回の不成約事例
今回の店舗概要です。
所在地:名古屋市中区栄2丁目
業態:居酒屋
所在階:ビル2階
店舗面積:約18坪
営業期間:約2年
経営形態:友人同士による共同経営
募集期間:約4カ月
結果:居抜き売却不成立
最終対応:スケルトン返却
原状回復費:約250万円
この店舗は、友人同士で資金を出し合って開業した居酒屋でした。
開業するときには、
「一緒に店を成功させよう」
という思いがあったと思います。
しかし、開業後に思うように売上が伸びませんでした。
そして売上不振が続くにつれて、少しずつ2人の関係も悪化していきました。
売上不振から共同経営者同士の関係が悪化
飲食店経営は、実際に始めてみるとさまざまな問題が発生します。
売上。
仕入れ。
人件費。
家賃。
営業時間。
従業員。
シフト。
集客。
資金繰り。
今回の店舗でも売上が思うように伸びない中で、
「どちらが現場に立つのか」
「どちらの負担が大きいのか」
といったことで意見が衝突するようになりました。
最初は些細な違いだったものが、経営状況が悪化するにつれて大きな対立へ発展。
最終的には、かなり激しい喧嘩になるほど関係が悪化していました。
友人関係で始めた共同経営でしたが、
お金と仕事が絡むことで、それまでの友人関係まで壊れてしまったケース
です。
共同経営そのものが悪いわけではない。しかし難しい
もちろん、
共同経営=必ず失敗する
という話ではありません。
それぞれの得意分野を生かし、
調理担当。
接客担当。
経理担当。
集客担当。
など役割を明確にすることで、共同経営がうまくいくケースもあります。
一人では用意できない資金を複数人で出し合うことで、開業できることもあります。
しかし共同経営には、
意思決定者が一人ではない
という難しさがあります。
経営が順調なときには問題にならなかったことが、売上が悪くなると一気に表面化することがあります。
特に、
閉店・撤退・店舗売却
という場面では大きな問題になる可能性があります。
居抜き売却を始めても2人の意見がまとまらない
今回の店舗でも、最終的には居抜き売却を検討することになりました。
しかし、ここから別の問題が発生しました。
それが、
「いくらで売るのか」
です。
一人は、
「この価格なら売ってもいい」
と言う。
もう一人は、
「その金額では安すぎる」
と言う。
そこで条件を変更しようとすると、
今度は別の意見が出てくる。
売却について打ち合わせをしても、
2人の希望条件が揃わない状態
が続きました。
「結局、どちらの話を聞けばいいのか分からない」
居抜き売却を仲介する側としても非常に難しい状態になります。
Aさんから、
「この金額まで下げても大丈夫です」
と言われる。
しかしBさんへ確認すると、
「そんな話は聞いていない。そこまで下げるつもりはない」
と言われる。
逆にBさんと条件を調整すると、Aさんから、
「勝手に決めないでほしい」
と言われる。
これでは、
売却条件を確定できません。
買主候補から価格交渉が入っても、
その場で回答できない。
条件変更を提案しても合意できない。
引渡し条件も決まらない。
募集価格の変更も進まない。
結果として、
売却活動そのもののスピードが落ちていきます。
居抜き売却では「誰が最終決定するのか」が重要
通常の居抜き売却でも、
造作価格。
譲渡設備。
除外設備。
引渡し時期。
価格交渉。
残置物。
契約条件。
など、さまざまな判断が必要になります。
例えば買主から、
「あと30万円下がれば契約したい」
と言われたとします。
売主が一人なら、
「分かりました」
「そこまでは下げられません」
と判断できます。
しかし共同経営で、
一人は30万円値下げしてもいい。
もう一人は絶対に嫌だ。
となれば話は止まります。
買主側もいつまでも待ってくれるとは限りません。
条件の良い別の店舗が見つかれば、そちらへ行ってしまう可能性があります。
買主は売主同士の事情を待ってくれない
売主側からすれば、
「2人で話し合ってから返事します」
というのは当然かもしれません。
しかし買主側は、
この店舗だけを見ているとは限りません。
栄。
錦。
伏見。
新栄。
大須。
金山。
など、複数の物件を比較している可能性があります。
条件交渉をしても返事が来ない。
価格が毎回変わる。
話す相手によって条件が違う。
引渡し条件が決まらない。
このような状態になれば、
「この店舗は契約まで時間がかかりそうだ」
と判断される可能性があります。
居抜き売却では、店舗の魅力だけではなく、
売主側がスムーズに意思決定できること
も非常に重要なのです。
立地が悪かったわけではない
今回の店舗は名古屋市中区栄2丁目。
ビル2階ではありましたが、
立地そのものが極端に悪かったわけではありません。
店舗面積も約18坪。
開業から約2年です。
つまり今回の不成約は、
「誰も欲しがらない店舗だったから売れなかった」
と単純に説明できる事例ではありません。
売却条件をきちんと整理し、
売主側の意思決定が統一されていれば、違った結果になった可能性もあります。
だからこそ、この事例は非常にもったいないケースでした。
4カ月募集しても決まらなかった
結果として、
約4カ月間募集
しましたが、居抜き売却は成立しませんでした。
4カ月という時間があれば、
募集。
問い合わせ。
内覧。
価格調整。
条件交渉。
貸主側との調整。
などを進められる可能性があります。
しかし今回のように、売主側で条件がまとまらなければ、その時間を十分に活用できません。
居抜き売却では、
「募集期間が長い=売却活動に使える時間が多い」
とは限らないのです。
最終的にスケルトン返却へ
居抜きでの買主が決まらないまま退去期限が近づき、最終的には、
スケルトン返却
となりました。
そして、
原状回復費として約250万円
が必要になりました。
居抜きで売却できていれば、造作譲渡代金を受け取れた可能性があります。
さらに、契約内容や貸主側との調整次第では、原状回復等の負担を抑えられた可能性もあります。
しかし実際には居抜き売却が成立せず、
約250万円を支払って原状回復する結果
となりました。
非常にもったいない結果です。
売却価格を統一していれば結果は違ったかもしれない
もちろん、
2人の意見が一致していれば必ず売れた
とは言えません。
居抜き売却には買主が必要だからです。
しかし、
募集価格。
値下げ可能額。
引渡し条件。
譲渡設備。
交渉可能な条件。
について事前に2人で合意できていれば、少なくとも売却活動は進めやすくなっていたはずです。
共同経営の店舗では、
募集を始めてから話し合うのでは遅い
ことがあります。
共同経営なら売却前に最低価格を決めておく
例えば、
募集価格300万円。
250万円なら即決。
200万円なら2人で再協議。
200万円未満では売らない。
このように、
価格交渉が入った場合のルール
まで決めておくと売却活動がスムーズになります。
「300万円で募集する」
だけでは不十分です。
買主から、
「250万円なら契約したい」
と言われる可能性があるからです。
そのたびに共同経営者同士で喧嘩をしていたら、商談は進みません。
「誰を窓口にするか」も決める
共同経営の店舗を売却するときは、
居抜き業者との窓口を一人に決める
ことも重要です。
もちろん最終的な意思決定は、権利関係や当事者間の合意に従って行う必要があります。
しかし、
Aさん。
Bさん。
それぞれから別の指示が来る状態では、売却活動が混乱します。
例えば、
窓口はAさん。
重要な条件変更はA・B双方で確認。
双方確認後に居抜き業者へ正式回答。
というルールを決めておくだけでも違います。
お金が絡むと友人関係が変わることがある
友人同士で店を始めるときは、
「俺たちなら大丈夫」
と思うかもしれません。
しかし飲食店経営では、
誰が何時間働いた。
誰が休んだ。
誰が売上を作った。
誰が仕入れを担当した。
誰が追加資金を出した。
誰の給料が多い。
など、さまざまな問題が発生します。
特に売上が悪くなると、
「自分の方が頑張っている」
という感情が生まれやすくなります。
今回も、
「どちらが現場に立つのか」
という一見小さな問題が、大きな対立へ発展していきました。