飲食店を閉店するとき、
「この店、居抜きならいくらで売れるだろう?」
これは多くの店舗経営者が最も気になることではないでしょうか。
300万円。
500万円。
場合によっては、それ以上。
高額で居抜き売却できる店舗がある一方で、
「100万円でも問い合わせが来ない」
「造作代0円でも次のテナントが決まらない」
という店舗もあります。
では、この違いは何なのでしょうか。
内装にお金をかけた店ほど高く売れるのでしょうか。
厨房機器が新しければ高く売れるのでしょうか。
名古屋駅、栄、錦などの一等地なら必ず高く売れるのでしょうか。
実は、居抜き売却の価格はそれほど単純ではありません。
例えば開業時に2,000万円をかけた店舗でも、希望する価格で売れないことがあります。
反対に、開業から何年も経過している小さな飲食店でも、立地や賃貸条件、設備、業態などによって高く評価されるケースがあります。
居抜き店舗の価値は、
「内装にいくらかけたか」ではなく、「次の出店者にとってどれだけ価値があるか」
で考えることが重要です。
今回は名古屋で飲食店・店舗の居抜き売却を専門に取り扱う居抜キングが、居抜きで高く売れる店と売れない店の違い、そして造作価格を左右する10のポイントについて詳しく解説します。
前編では、特に重要なポイントから順番に見ていきましょう。
そもそも「造作価格」は誰が決めるのか?
まず理解しておきたいのが、造作価格の考え方です。
飲食店を開業するとき、
内装工事800万円。
厨房設備500万円。
空調200万円。
看板100万円。
家具・什器200万円。
合計1,800万円。
これだけのお金をかけたとします。
すると売主としては、
「1,800万円かけたんだから、500万円くらいでは売れるだろう」
と思いたくなります。
しかし、開業時にかけた金額と現在の造作価値は同じではありません。
なぜなら、買主が購入するのは、
「過去にいくらかかった店舗」ではなく、「これから自分が使える店舗」
だからです。
ここを理解することが、居抜き売却では非常に重要です。
2,000万円かけた店が300万円、500万円かけた店が400万円になることもある
極端に言えば、
2,000万円をかけて作った店舗が300万円。
500万円程度で作った店舗が400万円。
ということもあり得ます。
一見すると不思議ですが、買主側から考えると分かります。
2,000万円かけた店舗でも、
家賃が高すぎる。
立地が悪い。
厨房が特殊すぎる。
設備が古い。
店内が広すぎる。
次の業態へ変更しにくい。
となれば、購入できる人は限定されます。
反対に500万円で作った小規模店舗でも、
駅から近い。
家賃が安い。
10坪前後。
厨房設備が揃っている。
すぐ営業できる。
ラーメン、居酒屋、焼鳥など複数業態へ転用できる。
となれば、
「この店なら欲しい」
という人が複数現れる可能性があります。
つまり居抜き売却では、
「いくらかけたか」より「誰が欲しがるか」。
これが価格を考える基本になります。
ポイント1|立地だけではなく「その立地でその家賃」が重要
居抜き店舗の価値を左右する最初のポイントが立地です。
名古屋市内でも、
名駅。
栄。
錦。
金山。
大須。
今池。
藤が丘。
など、飲食店需要の強いエリアがあります。
当然、人通りが多く飲食需要のある場所は居抜き売却でも有利になりやすいでしょう。
しかし、
「栄だから高く売れる」
「錦だから必ず売れる」
というわけではありません。
重要なのは、
立地と賃料のバランスです。
一等地でも家賃が高すぎれば買主は慎重になる
例えば同じような10坪の飲食店が2店舗あるとします。
A店舗は非常に目立つ場所ですが、月額賃料50万円。
B店舗は一本裏の通りですが、月額賃料25万円。
どちらが居抜きで高く売れるでしょうか。
必ずしもAとは限りません。
飲食店経営者が店舗を探すときは、
「人通りが多いか」
だけではなく、
「この家賃を毎月払い続けられるか」
を考えます。
造作代は最初の一度だけです。
しかし家賃は、営業を続ける限り毎月発生します。
そのため、
少し立地が劣っていても賃料条件が良い店舗の方が、買主から人気になる
ことがあります。
ポイント2|店舗の大きさは「広ければ高い」ではない
次に重要なのが店舗面積です。
一般的な不動産では、
「広い方が価値が高い」
と考えがちです。
しかし、居抜き店舗では必ずしもそうではありません。
例えば50坪の大型居酒屋。
豪華な内装。
大型厨房。
客席100席。
一見すると高額で売れそうです。
しかし次の出店者からすると、
家賃が高い。
保証金が高い。
スタッフが多く必要。
光熱費も高い。
改装費も高い。
という問題があります。
つまり、購入できる経営者が限られます。
小さな店舗ほど買主候補が増えることもある
一方、
8坪。
10坪。
12坪。
15坪。
程度の小規模飲食店なら、
個人開業。
夫婦経営。
2店舗目。
独立開業。
小規模法人。
など、幅広い購入希望者が検討できます。
初期投資を抑えて開業したい人にとって、完成した小箱の居抜き店舗は非常に魅力があります。
特に、
カウンター。
厨房。
空調。
トイレ。
給排水。
ガス。
などが揃っていれば、買主側の開業費用を大きく抑えられる可能性があります。
だから、
「狭いから安い」とは限りません。
居抜き市場では、扱いやすい小規模店舗が高く評価されるケースがあります。
ポイント3|厨房設備は「購入価格」より「今使えるか」
居抜き売却で大きな価値を持つのが厨房設備です。
業務用冷蔵庫。
冷凍庫。
製氷機。
食器洗浄機。
フライヤー。
ガスレンジ。
シンク。
作業台。
コールドテーブル。
焼台。
こうした設備を一から揃えれば、相当な費用になります。
そのため設備が残っていること自体は、居抜き売却で大きなメリットになります。
しかし、
「新品で500万円した厨房だから300万円の価値がある」
とは限りません。
重要なのは、
現在も使用できるかどうか。
です。
厨房機器の年式だけでは判断できない
例えば10年前の業務用冷蔵庫でも、しっかり稼働している場合があります。
反対に比較的新しい設備でも、
故障している。
異音がする。
冷えない。
油汚れがひどい。
長期間使用していない。
メンテナンスされていない。
という状態なら、買主から見ればリスクになります。
さらに、
メーカー。
型番。
年式。
容量。
電源。
ガス種。
設備のサイズ。
なども重要です。
買主がそのまま使える設備であれば価値があります。
使えなければ、むしろ撤去費用が発生する可能性があります。
つまり、
「設備がある=価値」ではなく「使える設備がある=価値」。
ということです。
ポイント4|次の業態へ転用しやすい店舗は強い
居抜き売却では、
「この店を欲しい人が何人いるか」
が非常に重要です。
例えば非常に特殊な内装の店舗。
特定業態にしか使えない厨房。
個性的すぎるレイアウト。
こうした店舗は、その業態をやりたい人には非常に魅力的です。
しかし、購入候補は少なくなります。
一方、
居酒屋。
焼鳥。
和食。
中華。
韓国料理。
バル。
など、複数業態へ比較的転用しやすい店舗なら、買主候補が増えます。
買主候補が増えれば、造作価格を維持できる可能性も高くなります。
ラーメン店だからラーメン店に売る必要はない
例えばラーメン店を居抜き売却するとします。
売主は、
「次もラーメン屋じゃないと無理だろう」
と思うかもしれません。
しかし実際には、
中華料理。
まぜそば。
つけ麺。
定食屋。
居酒屋。
その他飲食店。
など、設備やレイアウト次第では別業態が検討できることがあります。
逆に、
「ラーメン店居抜き」
と限定しすぎることで買主候補を狭めてしまう可能性もあります。
居抜キングでは、
現在の業態だけではなく、次にどんな業態へ転用できるのか
という視点も重要だと考えています。
ポイント5|排気・給排水・ガス・電気など「見えない設備」が価格を左右する
居抜き店舗を見ると、多くの人が最初に気にするのは内装です。
おしゃれなカウンター。
高級感のある壁。
きれいな照明。
デザインされた客席。
もちろん見た目も重要です。
しかし、飲食店を開業する人が本当に気にするのは、それだけではありません。
むしろ、
ダクト。
排気。
給排水。
ガス容量。
電気容量。
グリストラップ。
空調。
防水。
など、目立たない設備の方が重要になることがあります。
おしゃれな店でも「焼肉ができない」なら焼肉店には売れない
例えば非常におしゃれな30坪の店舗があったとします。
しかし、
排気能力が弱い。
ガス容量が不足している。
ダクトを追加できない。
となれば、焼肉店や重飲食を希望する買主には向かない可能性があります。
反対に、見た目は古くても、
十分な排気設備。
大きなガス容量。
給排水。
厨房スペース。
が確保されていれば、
「内装は自分で直すから、この設備が欲しい」
という買主が現れる可能性があります。
居抜き店舗では、
見える内装より、見えない設備の方が高額なことがある。
この点を忘れてはいけません。
「フルリノベーションされるなら居抜き価値ゼロ」でもない
買主が、
「内装は全部やり直します」
と言った場合、
「それなら居抜きで売る意味がないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、そうとは限りません。
内装を大きく変更するとしても、
空調。
給排水。
トイレ。
厨房区画。
電気。
ガス。
ダクト。
防水。
など、既存設備を利用できれば、買主の開業コストを抑えられる可能性があります。
つまり、
内装を壊す買主であっても、居抜き店舗そのものに価値を感じることがあります。
ここは居抜き売却で非常に重要なポイントです。
高く売れる店は「買主の開業費用を減らせる店」
ここまで5つのポイントを見てきました。
共通しているのは、
売主がいくらお金をかけたかではありません。
次の出店者が、いくらお金をかけずに開業できるか。
ここです。
例えば買主が通常なら、
内装工事600万円。
厨房300万円。
空調150万円。
ダクト150万円。
その他200万円。
合計1,400万円。
必要だったとします。
しかし居抜き店舗を購入することで、使える設備や内装を活用し、開業費用を大きく圧縮できる。
そうなれば、買主にとって造作代を支払う意味があります。
逆に、
500万円の造作代を支払ったうえに、
厨房を全部撤去。
内装を全部解体。
空調交換。
ダクト新設。
となれば、買主にとって魅力は薄くなります。
「売主が欲しい価格」と「買主が払える価格」は違う
居抜き売却で失敗しやすいのが、
売主側の事情だけで価格を決めてしまうことです。
「開業に2,000万円かかったから500万円欲しい」
「借金が400万円残っているから400万円で売りたい」
「次の事業資金として300万円必要だから300万円」
売主の気持ちとしては当然です。
しかし買主は、その事情を基準に購入しません。
買主が見るのは、
この店舗を買ったら総額いくらで開業できるのか。
家賃はいくらなのか。
改装はいくら必要なのか。
設備はどれだけ使えるのか。
営業許可に必要な工事はあるのか。
自分の業態に合っているのか。
という部分です。
だから造作価格は、
売主の「かけた金額」ではなく、買主の「これから必要な金額」から逆算する。
この視点が重要になります。
500万円で売り出して問い合わせゼロなら「500万円の価値がない」とは限らない
ここも注意が必要です。
500万円で売り出して1か月問い合わせがなかった。
だから、
「この店舗には価値がない」
とは限りません。
原因は別にあるかもしれません。
募集情報が購入候補者へ届いていない。
写真が悪い。
設備情報が不足している。
店舗の強みが伝わっていない。
業態を限定しすぎている。
家賃など賃貸条件が分かりにくい。
そもそも希望価格が市場と合っていない。
さまざまな可能性があります。
大切なのは、
「売れない=すぐ値下げ」ではなく、なぜ問い合わせがないのかを確認すること。
です。
造作価格だけを下げ続けると、最後に原状回復費まで残ることがある
例えば最初に600万円で売り出した店舗。
売れない。
500万円。
まだ売れない。
400万円。
300万円。
200万円。
それでも決まらない。
そして賃貸借契約の解約期限が来て、
結局200万円を払って原状回復。
こうなれば、
「もっと早く販売方法を見直していれば」
ということになります。
居抜き売却では価格も重要ですが、それと同じくらい、
残された時間
が重要です。
高く売りたいなら「閉店してから」では遅いことがある
飲食店を閉店してから居抜き売却を始めると、毎月固定費だけが発生します。
家賃30万円なら、
1か月30万円。
3か月90万円。
6か月180万円。
造作を50万円高く売るために3か月余計にかかれば、その間の家賃で差額が消えることもあります。
だから、
「最高値で売ること」と「最終的に一番お金を残すこと」は同じではありません。
居抜き売却では、
造作価格。
売却期間。
家賃。
原状回復費。
撤去費。
閉店時期。
これらをまとめて考える必要があります。
前編まとめ|高く売れる店は「豪華な店」ではなく「次の人が使いやすい店」
ここまで、造作価格を左右する10のポイントのうち、前半5つを解説しました。
① 立地と賃料のバランス
② 店舗面積と買主層
③ 厨房設備の状態
④ 次の業態への転用性
⑤ 排気・給排水・ガス・電気などの設備
どれも共通しているのは、
売主から見た価値ではなく、買主から見た価値を考えること。
です。
1,500万円かけた豪華な店だから高い。
新しい店だから高い。
駅前だから高い。
広いから高い。
厨房機器が多いから高い。
必ずしもそうではありません。
居抜き市場で強いのは、
「この店なら少ない初期投資ですぐ始められる」と思ってもらえる店舗です。
そして、もう一つ重要なのが、
売却するタイミングと賃貸条件です。
後編では、残りの5つとして、
⑥ 家賃・保証金・契約条件
⑦ 営業年数と店内の状態
⑧ 貸主・管理会社の承諾と次の借主の審査
⑨ 売却を開始するタイミング
⑩ 希望価格と市場価格の設定
を詳しく解説します。
さらに、
「500万円で売れる店と、0円でも引き継がれない店は何が違うのか?」
「造作価格を高くするために閉店前にやるべきこと」
「造作価格より重要な原状回復費の削減」
まで踏み込んでいきます。
居抜き売却は、
高く売れれば成功
ではありません。
最終的に、
いくら受け取り、いくら払わずに済み、いくら手元に残ったのか。
そこまで考えて初めて、本当の意味での「高く売れた」と言えるのです。
――閉店を決めたら、壊す前に。
名古屋で飲食店・店舗の居抜き売却なら、居抜キングへ。