飲食店や店舗を居抜きで売却する際、売主様が最も嬉しい瞬間の一つが、
「買いたいという人が見つかりました!」
という連絡ではないでしょうか。
何カ月も問い合わせがなかった店舗。
何度も内覧を重ねた店舗。
希望価格を下げながら募集を続けてきた店舗。
そんな状況で買主候補が現れれば、ようやく売却できると安心するのも当然です。
しかし、居抜き売却の現場では、ここからが重要です。
買主が見つかったからといって、居抜き売却が成立したとは限りません。
実際には、まだ多くの手続きが残っています。
大家・管理会社との調整。
買主の入居審査。
新しい賃貸借条件の確認。
造作譲渡契約の締結。
手付金や売買代金の支払い。
厨房設備の確認。
営業終了日の調整。
そして、店舗の引渡し。
これらが予定どおり進めば問題ありません。
しかし、一つでも条件が合わなければ、売却が成立しない可能性があります。
例えば、
「造作価格300万円で合意したのに、入居審査に落ちた」
「買主が手付金を支払った後にキャンセルした」
「大家から次のテナントは飲食店不可と言われた」
「引渡し直前に厨房機器が故障した」
「売却できると思っていたのに、結局スケルトン返却になった」
といった問題です。
特に、閉店日や退去期限が決まっている店舗では、契約手続きの遅れが大きな負担につながることもあります。
そこで今回は、名古屋市を中心に飲食店・店舗の居抜き売却を取り扱う居抜キングが、買主決定後によくある疑問をQ&A形式で50項目にまとめました。
前編では、**Q1〜Q25「買主決定後の流れ・大家の承諾・入居審査・造作譲渡契約・手付金」**について解説します。
これから居抜き売却を検討している方はもちろん、すでに買主候補が見つかっている方にも参考にしていただきたい内容です。
第1章|買主が決まった後、最初に何をする?
Q1.居抜き売却で買主が見つかったら、まず何をすればいい?
A.買主の希望条件を確認し、貸主側の条件と照合することが重要です。
まず確認したいのは、
買主の希望業態
希望する造作価格
開業予定時期
希望する引渡し日
必要な厨房設備
賃貸条件への同意
などです。
買主が「300万円で買いたい」と言っていても、次の賃貸借契約が成立しなければ、予定していた引継ぎができない場合があります。
造作価格だけでなく、店舗を借りられる条件まで確認しましょう。
Q2.買主が「買います」と言ったら売却成立ですか?
A.いいえ。購入意思の表明だけで、必ず売却が成立するわけではありません。
買主が購入意思を示しても、その後に条件交渉や契約手続きが必要になることがあります。
また、口頭でも合意内容によっては契約成立が問題になる場合があるため、安易に「まだ書面がないから何も決まっていない」と考えることも避けるべきです。
重要なのは、いつ、どの条件で契約が成立するのかを明確にすることです。
Q3.買主が決まったら、すぐ募集を停止した方がいい?
A.交渉状況や合意内容によって判断します。
例えば、
購入意思を示しただけ。
条件交渉中。
入居審査中。
契約締結済み。
では、取引の確実性が異なります。
買主に独占交渉を認める場合は、期間や条件を明確にしておくことが重要です。
募集を止めるタイミングも売却戦略の一つです。
Q4.買主が見つかったら、すぐ大家へ連絡するべき?
A.貸主側との調整状況を確認し、適切なタイミングで連絡する必要があります。
居抜き売却では、造作を購入する人が見つかっても、その人が次のテナントとして入居できるとは限りません。
貸主側で、
業態。
信用力。
保証会社。
営業時間。
賃貸条件。
などの確認が必要になる場合があります。
事前に貸主と協議していない場合は、早めに確認することが重要です。
Q5.売主と買主だけで造作譲渡を決めてもいい?
A.造作の売買と、店舗を借りる権利は別に考える必要があります。
売主が所有する厨房設備や内装等について売買の合意をすることと、買主が店舗を賃借できることは別です。
賃借権の譲渡や転貸には、原則として貸主の承諾が必要です。
また、現在の賃貸借契約を終了し、買主が新しく契約する場合も、貸主との合意が必要になります。
造作を買っただけで、その店舗を自由に使えるわけではありません。
第2章|大家・管理会社の承諾と新しい賃貸条件
Q6.大家が居抜き売却を認めなかったらどうなる?
A.予定していた居抜き引継ぎが成立しない可能性があります。
例えば、
次のテナントは飲食店不可。
業態変更を認めない。
スケルトン返却が条件。
新しい借主の審査を認めない。
などのケースです。
買主が造作価格に合意していても、貸主側の条件によって引継ぎができない場合があります。
だからこそ、買主が見つかる前から貸主側の条件を確認しておくことが大切です。
Q7.今の家賃を買主がそのまま引き継げますか?
A.必ずしも引き継げるわけではありません。
例えば、現在の家賃が月額15万円でも、貸主が新しいテナントに月額18万円を提示する可能性があります。
その場合、買主の事業計画が変わります。
造作価格300万円では合意していても、新家賃が想定より高ければ購入を見送る可能性があります。
現在の賃料と、新しい借主へ提示される賃料は分けて確認しましょう。
Q8.大家が新しい保証金を高く設定したら?
A.買主の初期費用が増えるため、売却条件に影響する場合があります。
例えば、
造作代金300万円。
保証金200万円。
保証会社費用。
前家賃。
仲介手数料。
改装費。
などが必要なら、買主は造作価格以外にも多額の資金を用意する必要があります。
そのため、造作価格だけで交渉を進めるのではなく、開業時の総費用を把握することが重要です。
Q9.買主が別の業態で開業したい場合は?
A.貸主の募集条件や建物設備、必要な許認可等を確認します。
例えば、現在はカフェでも、買主が焼肉店を希望する場合があります。
しかし、
排気ダクト。
ガス容量。
消防設備。
臭気・煙。
営業時間。
貸主の業態制限。
などによって、希望業態で営業できない可能性があります。
現在飲食店だからといって、次もすべての飲食業態が可能とは限りません。
Q10.買主が決まった後に大家が条件変更することはある?
A.新しい賃貸借契約の条件を貸主が提示する場合があります。
ただし、貸主が現在の賃貸借契約を自由に一方的変更できるという意味ではありません。
新しい借主との契約条件については、貸主と買主との合意が必要です。
売主としては、造作価格の交渉が進んでから賃貸条件の違いが判明しないよう、早めに確認することが重要です。
第3章|買主の入居審査で起こりやすい問題
Q11.居抜き売却でも買主の入居審査はありますか?
A.新たに賃貸借契約を締結する場合、貸主や保証会社による審査が行われることがあります。
審査では、
事業内容。
資金計画。
支払能力。
保証会社の利用。
法人情報。
代表者情報。
などが確認される場合があります。
造作を買う資金があることと、入居審査に通ることは別です。
Q12.造作代金を現金で払える買主なら審査に通りますか?
A.必ずしもそうではありません。
造作代金300万円を現金で支払える買主でも、貸主や保証会社の審査基準を満たすとは限りません。
例えば、
開業後の家賃支払能力。
事業内容。
保証人。
必要書類。
などが判断材料になる場合があります。
現金購入できることだけで入居承認が確約されるわけではありません。
Q13.入居審査にはどれくらい時間がかかりますか?
A.貸主・管理会社・保証会社・提出書類などによって異なります。
短期間で結果が出る場合もあれば、追加資料の提出や確認に時間がかかる場合もあります。
そのため、売主は退去期限から逆算して審査日程を確認することが重要です。
特に、解約通知済みの店舗では、審査の遅れが引渡しスケジュールへ影響することがあります。
Q14.買主が入居審査に落ちたら、居抜き売却は白紙ですか?
A.造作譲渡契約の内容や、取引の進捗によって異なります。
例えば、契約書に、
「買主が入居審査に否決された場合、本契約を解除できる」
という条件があれば、その条項に従って処理することになります。
ただし、すべての契約が自動的に白紙になるわけではありません。
審査否決時の解除条件を契約前に明確にしておくことが重要です。
Q15.入居審査に落ちた買主の代わりに別の買主を探せますか?
A.契約関係を適切に整理したうえで、別の買主候補を探すことは考えられます。
ただし、最初の買主との契約が有効に残っている場合、勝手に別の買主へ二重に譲渡することは避けなければなりません。
まずは、
契約が成立しているか。
解除できる条件か。
返金が必要か。
独占交渉の取り決めがあるか。
を確認します。
最初の取引を整理してから、次の募集へ進むことが大切です。
第4章|造作譲渡契約書で確認すべきこと
Q16.造作譲渡契約書は必ず作った方がいい?
A.トラブル防止のため、書面で契約内容を明確にすることを強くおすすめします。
造作譲渡では、売主と買主の間で、
何を売るのか。
いくらで売るのか。
いつ支払うのか。
いつ引き渡すのか。
故障設備はどう扱うのか。
キャンセルした場合はどうするのか。
などを決める必要があります。
口頭だけでは、後から認識の違いが生じる可能性があります。
売主・買主双方が合意内容を確認できる契約書を作成することが重要です。
Q17.造作譲渡契約書には何を書けばいい?
A.最低限、売買条件と引渡し条件、解除条件を明確にしましょう。
例えば、
売主・買主の氏名または法人名
対象店舗の表示
造作譲渡代金
譲渡対象の設備・内装・什器
譲渡対象外の設備
支払日と支払方法
引渡し日
入居審査否決時の取り扱い
設備故障・契約不適合に関する取り決め
契約解除・違約金
などです。
特に注意したいのが、造作譲渡契約と新しい賃貸借契約の関係です。
買主が店舗を借りられなかった場合の処理を曖昧にしないことが大切です。
Q18.厨房設備は「一式」と書けば大丈夫?
A.「厨房設備一式」だけでは、トラブルになる可能性があります。
例えば、
業務用冷蔵庫。
製氷機。
コールドテーブル。
食器洗浄機。
ガスレンジ。
フライヤー。
エアコン。
ダクト。
などです。
売主は当然含まれると思っていても、買主は別の認識をしている場合があります。
可能であれば、設備一覧表や写真を添付して譲渡範囲を明確にすることをおすすめします。
Q19.売りたくない厨房機器は持って帰ってもいい?
A.譲渡対象から除外することを事前に合意していれば、持ち帰れる場合があります。
例えば、
高額な製氷機。
購入したばかりの冷蔵庫。
レジ。
個人所有の家具。
などです。
ただし、買主が店舗内の設備をすべて引き継げると思っていた場合、トラブルになる可能性があります。
譲渡対象外の設備こそ、契約書へ明確に記載しましょう。
また、撤去工事が必要な設備については、貸主との契約や建物への影響も確認する必要があります。
Q20.「現状有姿・契約不適合責任免責」と書けば売主は安心?
A.一定のリスクを軽減できる場合がありますが、すべての責任がなくなるわけではありません。
中古の厨房設備には、経年劣化や故障リスクがあります。
そのため、現状有姿での譲渡や契約不適合責任の範囲について合意することは重要です。
ただし、売主が知っていた不具合を適切に伝えていない場合など、免責条項があっても責任が問題になることがあります。
「免責と書いたから何も説明しなくていい」という考え方は危険です。
第5章|手付金・造作代金・支払いでよくある疑問
Q21.造作譲渡契約では手付金をもらった方がいい?
A.手付金を設定する方法はありますが、必須ではありません。
例えば、造作譲渡代金300万円の場合、
契約時に30万円。
残金270万円を引渡し時に支払う。
という方法が考えられます。
ただし、これはあくまで一例です。
手付金の有無や金額は、当事者間の合意によって決めます。
重要なのは、受領した金銭の性質と返還条件を明確にすることです。
Q22.手付金はいくらに設定するのが一般的?
A.居抜きの造作譲渡について、一律に決まった手付金額があるわけではありません。
造作代金。
売主・買主の希望。
契約から引渡しまでの期間。
入居審査の進捗。
などを踏まえて決めます。
例えば300万円の造作譲渡で30万円を手付金とすることも考えられますが、必ず10%にする必要があるわけではありません。
金額よりも、どのような場合に返還するのかを明確にすることが重要です。
Q23.買主が手付金を払ったら、もうキャンセルできない?
A.いいえ。手付金を支払ったからといって、必ず解除できなくなるわけではありません。
手付の性質や契約内容、履行状況によって取り扱いが異なります。
民法には、一定の条件のもとで手付を放棄したり、倍額を現実に提供したりすることによる解除の規定があります。
ただし、実際の契約では解除条件や手付の性質を確認する必要があります。
「手付金を受け取ったから売主は絶対に安心」とは言えません。
Q24.買主が入居審査に落ちたら手付金は返すの?
A.契約書の解除条件と返金条項によって判断します。
例えば、
「貸主または保証会社の入居審査が否決された場合、買主は契約を解除でき、売主は受領済みの代金を返還する」
という条項を設ける方法があります。
ただし、契約ごとに条件は異なります。
入居審査否決時に返金する取り決めなら、その内容に従って処理する必要があります。
審査に通る前に手付金を受け取る場合ほど、返金条件を明確にしておきましょう。
Q25.造作代金の残金はいつ受け取るのがいい?
A.引渡しと同時に決済する方法が考えられます。
例えば、
造作譲渡契約締結。
↓
買主の入居審査承認。
↓
新しい賃貸借契約の締結・開始条件の確認。
↓
造作代金の残金決済。
↓
設備・鍵等の引渡し。
という流れです。
ただし、実際の順序は契約内容によって異なります。
特に売主として注意したいのは、
代金を受け取る前に、厨房設備や鍵を引き渡してしまうことです。
未払いのまま引渡しを行うと、代金回収の問題が発生する可能性があります。
決済方法や引渡し条件を契約書に明記しておくことが重要です。
前編まとめ|買主が見つかってからが居抜き売却の重要な局面
ここまで、Q1〜Q25について解説しました。
居抜き売却では、買主が見つかった時点で安心してしまう売主様もいるかもしれません。
しかし、実際には、
買主が見つかった。
造作価格に合意した。
入居審査に通った。
造作譲渡契約を締結した。
売買代金を受け取った。
店舗を引き渡した。
これらは、それぞれ異なる段階です。
特に重要なのが、
「買主が決まった」と「売却が完了した」は違う
ということです。
例えば、造作価格300万円で買主と合意していても、貸主が入居を認めなければ予定していた引継ぎが成立しない場合があります。
また、入居審査に通ったとしても、造作譲渡契約の条件がまとまらない可能性もあります。
だからこそ、買主決定後の手続きを順番に整理することが大切です。
実際に名古屋であった「買主が見つかったのに売れなかった」事例
名古屋市千種区今池1丁目で取り扱った居酒屋の事例です。
ビル2階。
約18坪。
営業約3年。
気さくな大将が営む居酒屋でした。
売主様の希望造作価格は300万円。
買主候補も見つかり、価格についても合意しました。
ところが、管理会社へ入居審査を依頼した後、なかなか連絡がありませんでした。
こちらから電話やメールで問い合わせても、明確な返答が得られない状況が約2カ月続きました。
最終的に、退去期限が迫った段階で業態を理由に入居を認められないことが判明しました。
その頃には買主候補も、長期間手続きが進まなかったことで出店への意欲が薄れてしまっていました。
結果として、居抜き売却は成立せず、店舗は原状回復することになりました。
原状回復費は約230万円。
売主様にとっても、私たちにとっても非常につらい結果でした。
この事例から分かるのは、
「買主が見つかって価格が合意できても、貸主側の審査や条件が整わなければ売却できない」
ということです。
そして、入居審査に時間がかかることも想定して、退去期限から逆算する必要があります。
買主決定後に売主が確認したい7つのこと
買主の希望業態は貸主の条件に合っているか
新しい家賃・保証金等の条件は確認できているか
入居審査の必要書類とスケジュールは明確か
造作譲渡契約と賃貸借契約の関係は整理できているか
手付金・残金の支払条件は明確か
審査否決・キャンセル時の解除条件は決まっているか
退去期限までに引渡しができる見込みはあるか
この7項目を確認するだけでも、契約段階での認識違いを減らすことにつながります。
後編Q26〜Q50では、さらに深いトラブルを解説
後編では、買主が決まった後に起こりやすいトラブルを中心に解説します。
Q&A | 内容 |
|---|---|
Q26〜30 | 買主のキャンセル・違約金・契約解除 |
Q31〜35 | 厨房機器の故障・設備の所有権・契約不適合 |
Q36〜40 | 残置物・撤去・設備一覧・引渡し |
Q41〜45 | 引渡し遅延・家賃・原状回復・鍵 |
Q46〜50 | 売主を守る契約条項・最終確認 |
特に、
「契約後に冷蔵庫が故障したら?」
「買主が突然キャンセルしたら?」
「売主が残していく設備はどこまで?」
「引渡し後に故障が発覚したら?」
といった実務的な疑問を解説します。
名古屋で居抜き売却の契約・入居審査にお困りなら「居抜キング」へ
居抜キングでは、名古屋市を中心に愛知県全域で、飲食店・店舗の居抜き売却に関するご相談を承っています。
「買主が見つかったけど契約が不安」
「入居審査がなかなか進まない」
「造作譲渡契約書の内容を確認したい」
「手付金をいつ受け取ればいい?」
「買主がキャンセルした場合が心配」
「退去期限までに売却できるか不安」
そんな段階でも、まずは現在の状況を整理してみてください。
居抜き売却は、買主を見つけることだけが仕事ではありません。
買主が見つかってから、無事に引渡しが完了するまで。
そこまで考えて進めることが重要です。
「売れそうだった」で終わらせない。
「無事に売却できた」という結果につなげる。