飲食店を開業する際、「居抜き物件を利用して設備ごと購入する」という選択肢は、多くの開業者にとって非常に魅力的です。理由は多岐にわたりますが、コスト面・時間面・実用面において大きなメリットがあるためです。以下に、その詳細とメリット・デメリットを踏まえながら解説します。
「居抜き物件」とは、前のテナントが使用していた内装・厨房設備・什器などをそのまま引き継ぐ形で借りられる物件のことです。飲食店の場合、厨房機器や排気・給排水設備、カウンター、テーブルなどが残っているケースが多く、初期投資を大きく抑えることが可能になります。
新たに店舗をゼロから作る「スケルトン物件」と比べると、内装工事や設備購入のコストが圧倒的に安く済みます。飲食店では厨房機器だけでも数百万円かかることがありますが、居抜き物件であればこれらがすでに設置されており、そのまま使えることが多いです。
スケルトン物件からスタートすると、設計から工事完了まで数ヶ月を要することもあります。一方、居抜き物件ではすでにある程度の設備や内装が整っているため、必要最低限の修繕やカスタマイズのみで済み、数週間で開業できるケースもあります。
居抜き物件は、「前の店舗がうまくいかなかった」理由さえ分析すれば、立地や集客力のある場所でも比較的安価に入居できることがあります。過去に人気のあった店舗が撤退したあとなどは、地元住民の認知度も高く、宣伝コストも抑えられます。
すでに飲食営業許可を取得していた物件であれば、再度の審査も比較的スムーズです。給排水・ガス・電気なども飲食店向けの仕様になっているため、新規導入に比べてトラブルが少なく済みます。
設備が古くなっていたり、十分なメンテナンスがされていない場合、開業後にトラブルが発生するリスクがあります。冷蔵庫やフライヤー、エアコンなどの大型機器は特に点検が必要です。購入前に専門業者による検査を依頼するのが望ましいです。
すでに造作された内装や設備に合わせた営業スタイルをとらざるを得ない場合もあります。自分の理想とするコンセプトに合わない場合、逆に改装費がかさむ可能性があります。
前のテナントがなぜ撤退したのかを把握することが重要です。例えば、集客が難しい、近隣に強力な競合店がある、固定費が高すぎる、などの理由があれば、自分の店でも同じ問題に直面する可能性があります。
設備が「無料で使える」というわけではなく、造作譲渡料や保証金、仲介手数料などの名目で高額な費用が発生することもあります。市場価格と見合っているかどうか、必ず見積もりや交渉が必要です。
居抜きで設備ごと購入することは、資金が限られている人や、スピーディに開業したい人にとっては特に有利です。特に初めて飲食店を開く場合、予算を温存しつつリスクを分散できる点で大きな魅力があります。
ただし、設備の状態や立地、撤退理由などをしっかりと調査せずに進めると、かえって後々のコストやトラブルが膨らむリスクもあります。信頼できる不動産業者や飲食業の開業支援を行っている専門家に相談しながら、慎重に進めることが成功への鍵です。
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