はじめに|「月商500万円あるのに苦しい」は珍しくない
「飲食店は月商いくらあれば大丈夫なのか?」
これは、開業前の方も、すでに営業中の方も、必ず一度は考えるテーマではないでしょうか。
月商300万円、500万円、1,000万円。
数字だけを見ると十分に売れているように思えます。ですが実際には、売上があることと、利益が残ることはまったく別です。
たとえば、月商500万円あっても、
- 家賃が高い
- 人件費がかかりすぎている
- 原価率が高い
- 借入返済が重い
- 客数の波が大きい
といった問題があれば、思うようにお金は残りません。
反対に、月商300万円でも、固定費を抑え、利益率をしっかり確保できていれば、安定して経営できる店もあります。
つまり、飲食店が「潰れるかどうか」は、単純な月商の大小では決まりません。
重要なのは、その店の損益分岐点がどこにあるのか、そして赤字になる売上ラインを正しく把握しているかです。
本記事では、名古屋を中心に店舗売却・居抜き売却をサポートする居抜キングが、飲食店経営における売上の考え方を分かりやすく解説します。
前編では主に、次の内容を取り上げます。
- 飲食店は月商いくらないと危ないのか
- 損益分岐点とは何か
- 赤字になる売上ラインの考え方
- 月商300万・500万・1,000万円の収支イメージ
- 客単価から必要客数を逆算する方法
- 潰れやすい店に共通する数字の見方
これから開業する方にも、すでに経営中の方にも、かなり実践的な内容になっています。
ぜひ最後までご覧ください。
第1章|飲食店は月商いくらないと潰れるのか?結論は「店による」
最初に結論からお伝えします。
飲食店が潰れるかどうかは、月商だけでは判断できません。
月商200万円でしっかり利益が残る店もあれば、月商800万円あっても資金繰りに苦しむ店もあります。
この違いを生むのが、固定費・変動費・利益率・借入返済です。
たとえば、同じ月商500万円でも、
店舗A
- 家賃:30万円
- 人件費:120万円
- 原価:140万円
- その他経費:110万円
この場合、営業利益は100万円近く残る可能性があります。
店舗B
- 家賃:80万円
- 人件費:180万円
- 原価:170万円
- その他経費:90万円
この場合、営業利益はほとんど残らず、わずかな売上減少で赤字に転落することもあります。
つまり、**「月商いくら必要か」ではなく、「その店はいくら売らないと赤字になるのか」**を把握することが大切です。
この考え方が、損益分岐点です。
第2章|損益分岐点とは?飲食店経営で最重要の数字
2-1.損益分岐点とは何か
損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上高のことです。
ここを下回れば赤字。
ここを上回れば黒字。
飲食店経営では、この損益分岐点を知らずに営業していると非常に危険です。
なぜなら、「忙しいのに儲からない」という状態に気づけないからです。
2-2.固定費と変動費の違い
損益分岐点を理解するためには、まず費用を2つに分けて考える必要があります。
固定費
売上が増えても減っても、基本的に毎月ほぼ一定でかかる費用です。
- 家賃
- 一部の人件費
- リース料
- 保険料
- 通信費
- 減価償却費
- 借入返済のうち元本部分は会計上の費用ではないが、資金繰り上は重要
変動費
売上に比例して増減しやすい費用です。
- 食材原価
- 決済手数料
- 一部の消耗品費
- 売上連動型の広告費
- 営業量に応じて増減する光熱費の一部
飲食店の場合、完全に固定・完全に変動ときれいに分けられない費用もあります。
ただ、経営判断のためには、おおまかに分けて考えるだけでも大きな意味があります。
2-3.損益分岐点の基本式
損益分岐点売上高は、基本的に次の式で考えます。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
限界利益率とは、売上から変動費を引いた後に残る割合です。
たとえば、売上に対して変動費率が35%なら、限界利益率は65%です。
この数字を使うことで、
「毎月いくら売れば赤字を回避できるのか」
「利益を30万円残すにはいくら必要か」
が見えてきます。
第3章|月商300万円・500万円・1,000万円の店は実際どうなのか
ここでは、分かりやすくするために仮のモデルケースで見ていきます。
なお、数字は説明用のシミュレーションであり、実際の店舗ごとに異なります。
3-1.月商300万円の飲食店
たとえば小規模な居酒屋やカフェで、月商300万円の店を考えます。
モデル例
- 売上:300万円
- 原価:90万円(30%)
- 人件費:90万円(30%)
- 家賃:30万円(10%)
- 水道光熱費:18万円(6%)
- 広告宣伝費:9万円(3%)
- その他経費:45万円(15%)
合計経費は282万円。
営業利益は18万円です。
一見すると黒字ですが、ここからさらに
などを考えると、決して余裕があるとはいえません。
つまり、月商300万円は成立する店もあるが、かなり慎重な経費管理が必要なラインです。
3-2.月商500万円の飲食店
次に、月商500万円の居酒屋を考えます。
モデル例
- 売上:500万円
- 原価:150万円(30%)
- 人件費:150万円(30%)
- 家賃:50万円(10%)
- 水道光熱費:30万円(6%)
- 広告宣伝費:15万円(3%)
- その他経費:65万円(13%)
合計経費は460万円。
営業利益は40万円です。
月商500万円あっても、利益は40万円程度ということも珍しくありません。
もし家賃が70万円、人件費が170万円なら、利益は一気に圧迫されます。
つまり、月商500万円は「安定して見えるけれど、油断できない」ラインです。
3-3.月商1,000万円の飲食店
次に、比較的大きな居酒屋、焼肉店、または複数スタッフで回す店を想定します。
モデル例
- 売上:1,000万円
- 原価:320万円(32%)
- 人件費:280万円(28%)
- 家賃:100万円(10%)
- 水道光熱費:60万円(6%)
- 広告宣伝費:30万円(3%)
- その他経費:120万円(12%)
合計経費は910万円。
営業利益は90万円です。
月商1,000万円でも利益率は9%程度。
立派に見えても、想像ほど手元に残らないケースは多いのです。
とくに大型店舗は、
という特徴があります。
つまり、月商1,000万円でも安心とは限らず、固定費が高いと危険です。
第4章|飲食店が赤字になる売上ラインはどう決まる?
ここでは、損益分岐点をもっと実務的に考えてみます。
4-1.モデル店舗の損益分岐点を出す
たとえば、次のような店舗を想定します。
この場合、限界利益率は65%です。
したがって、
180万円 ÷ 0.65 = 約277万円
つまり、損益分岐点売上高は約277万円です。
この店は、月商277万円を下回ると赤字になる計算です。
4-2.利益30万円残すなら?
ただし、赤字でなければ良いわけではありません。
設備トラブルや税金、将来の投資を考えると、最低でもある程度の利益は必要です。
たとえば、毎月30万円の利益を出したいなら、
(固定費180万円+目標利益30万円)÷0.65 = 約323万円
つまり、月商323万円が必要という計算になります。
4-3.「黒字」と「安心」は違う
ここが重要です。
- 月商277万円 → 赤字回避ライン
- 月商323万円 → 最低限の利益確保ライン
- 月商350万円以上 → 少し余裕が出る可能性
このように、黒字になる売上と、安心して経営できる売上は違うのです。
ギリギリ黒字の状態では、
- 冷蔵庫が壊れた
- アルバイトが辞めた
- 雨が続いて売上が落ちた
- 仕入れ価格が上がった
というだけで、一気に赤字化する可能性があります。
第5章|必要客数はどう計算する?売上を客数に落とし込む
売上目標を立てるうえで、月商の数字だけ見ても現場では実感しにくいことがあります。
そこで必要なのが、客単価と必要客数の逆算です。
5-1.基本の計算式
必要客数 = 売上目標 ÷ 客単価
たとえば、月商300万円を目指す店で、平均客単価が3,000円なら、
300万円 ÷ 3,000円 = 1,000人
月間1,000人の来店が必要です。
25日営業なら、
1,000人 ÷ 25日 = 40人
つまり、1日40人の来店が必要です。
5-2.月商500万円なら?
客単価4,000円とすると、
500万円 ÷ 4,000円 = 1,250人
25日営業なら1日50人です。
5-3.月商1,000万円なら?
客単価5,000円なら、
1,000万円 ÷ 5,000円 = 2,000人
25日営業で1日80人です。
80席で1日1回転なら達成できそうに見えるかもしれませんが、実際には曜日差、雨天、閑散期、スタッフ不足などがあります。
だからこそ、必要客数はギリギリではなく、余裕を見て計算することが重要です。
第6章|必要客数だけでなく「席数」「回転率」も重要
必要客数が分かっても、その人数を本当にさばけるのかを考えなければ意味がありません。
6-1.席数から逆算する
たとえば30席の店で、1日50人必要なら、
50人 ÷ 30席 = 1.67回転
つまり、1日平均1.67回転が必要です。
ランチとディナーがある店なら可能かもしれません。
しかし、夜だけ営業の居酒屋で毎日1.67回転を安定して取るのは簡単ではありません。
6-2.客単価が低い店は必要客数が増える
同じ月商300万円でも、
- 客単価1,000円の店 → 月間3,000人必要
- 客単価3,000円の店 → 月間1,000人必要
- 客単価5,000円の店 → 月間600人必要
このように大きな差が出ます。
そのため、ラーメン店、カフェ、居酒屋、焼肉、BARでは、同じ月商でも経営難易度が違います。
第7章|潰れやすい飲食店に共通する3つの特徴
7-1.売上だけ見て利益を見ていない
「今月は売上が良かった」で終わってしまう店は危険です。
本当に見るべきは、利益率・固定費・資金残高です。
7-2.損益分岐点を把握していない
「なんとなく厳しい」「なんとなくいけそう」では経営は続きません。
月商いくらで赤字になるのかを把握していないと、対策が遅れます。
7-3.客数不足を単価で補えず、単価不足を客数でも補えない
必要客数の設計が甘い店は、思っている以上に危険です。
物件、席数、ターゲット、客単価が噛み合っていないと、そもそも必要売上に届きません。
前編まとめ|飲食店は「月商いくらか」ではなく「損益分岐点を超えているか」
飲食店は、月商300万円だから危ない、500万円だから安心、1,000万円だから成功、という単純なものではありません。
本当に大切なのは、
- 固定費がいくらあるのか
- 変動費率は何%か
- 損益分岐点はいくらか
- その売上を達成するために何人の来店が必要か
を把握することです。
同じ月商でも、経費構造が違えば、黒字にも赤字にもなります。
逆に言えば、損益分岐点を正しく把握できれば、経営改善の方向性も見えてきます。
売上を増やすべきなのか。
家賃を見直すべきなのか。
人件費を調整すべきなのか。
あるいは、これ以上続ける前に撤退や居抜き売却を考えるべきなのか。
その判断の出発点になるのが、損益分岐点です。
【2026年最新版】飲食店は月商いくらないと潰れる?赤字になる売上・損益分岐点・必要客数・閉店判断を徹底解説【後編】
飲食店経営者必見!売上減少・家賃負担・人件費高騰・資金繰り悪化から店舗を守る方法|居抜キング
はじめに|飲食店が潰れるのは売上が少ないからだけではない
「毎月500万円も売り上げているのに、なぜかお金が残らない」
「去年より売上が20%減っただけで、一気に赤字になってしまった」
「月商300万円を下回ったら、もう閉店するしかないのだろうか?」
飲食店を経営している方の中には、このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
飲食店経営において、売上が重要であることは間違いありません。
しかし、売上が多いからといって必ず黒字になるわけではなく、売上が少ないからといって必ず赤字になるわけでもありません。
本当に重要なのは、売上から食材費、人件費、家賃などの経費を差し引いた後、どれだけ利益が残るのかということです。
さらに、税金や借入金の返済、設備修繕費なども考慮しなければ、実際の資金繰りを正しく判断することはできません。
前編では、飲食店の損益分岐点について、月商300万円・500万円・1,000万円のモデルケースや必要客数の考え方を解説しました。
後編ではさらに踏み込み、飲食店が赤字になる具体的な原因、売上減少による利益への影響、赤字経営からの立て直し方、そして閉店や居抜き売却を検討するタイミングについて詳しく解説します。
名古屋市を中心に飲食店の居抜き売却・店舗売却をサポートする「居抜キング」が、飲食店オーナー様に知っておいていただきたい経営判断のポイントをお伝えします。
第8章|飲食店は売上が何%減ったら赤字になる?月商500万円の店舗で検証
飲食店経営では、売上が10%減少しただけでも、利益が大きく減ってしまう場合があります。
なぜなら、売上が減少しても家賃や一定の人件費などの固定費は簡単には減らないからです。
8-1.月商500万円・営業利益50万円の店舗
例えば、次のような飲食店を想定します。
月間売上:500万円
変動費率:40%
変動費:200万円
固定費:250万円
営業利益:50万円
営業利益率:10%
この店舗は、月商500万円を達成している場合、毎月50万円の営業利益を確保できます。
年間では600万円です。
一見すると、十分な利益を確保している飲食店に見えるかもしれません。
しかし、売上が減少するとどうなるでしょうか。
8-2.売上が10%減少した場合
月商500万円から10%減少すると、月商450万円です。
変動費率40%が変わらないと仮定すると、
売上:450万円
変動費:180万円
固定費:250万円
営業利益:20万円
となります。
売上は10%しか減っていませんが、営業利益は50万円から20万円へ減少しました。
売上10%減少に対して、営業利益は60%減少する計算です。
このように固定費負担が大きい飲食店では、売上のわずかな変化が利益に大きな影響を与えます。
8-3.売上が20%減少した場合
続いて、売上が20%減少したケースです。
月商500万円から400万円へ減少します。
売上:400万円
変動費:160万円
固定費:250万円
営業損失:10万円
つまり、月商500万円では営業利益50万円を確保していた店舗が、月商400万円になると赤字へ転落します。
年間では120万円の営業赤字に相当します。
これが、飲食店経営における固定費の怖さです。
売上が20%減ったからといって、経費も20%減少するわけではありません。
特に家賃、正社員の給与、リース料などは、売上が減少しても継続して発生します。
8-4.この店舗の赤字危険ラインは?
今回のモデルでは、固定費250万円、限界利益率60%です。
損益分岐点は、
250万円÷60%=約416万7,000円
となります。
つまり、この店舗では月商約417万円が営業損益の分岐点です。
月商500万円から約16.7%売上が減少すると、営業利益がほぼゼロになります。
重要なのは、すべての飲食店が売上20%減少で赤字になるという意味ではないことです。
店舗ごとに固定費や変動費率が異なるため、赤字になる売上ラインも変わります。
経営者は自店舗の損益分岐点を正しく把握することが重要です。
第9章|月商300万円・500万円・1,000万円の赤字危険ラインを比較
ここでは、売上規模ごとに損益分岐点を計算してみましょう。
以下の数字は、比較のための仮想シミュレーションです。
実際の飲食店の平均値ではありません。
9-1.月商300万円の飲食店
例えば、小規模な居酒屋を想定します。
月間固定費:180万円
変動費率:35%
限界利益率:65%
この店舗の損益分岐点は、
180万円÷65%=約276万9,000円
です。
つまり、月商277万円前後が営業利益ゼロのラインになります。
月商300万円の場合、
売上:300万円
変動費:105万円
固定費:180万円
営業利益:15万円
となります。
この店舗は、月商300万円で黒字を確保できます。
しかし、売上が約7.7%減少すると、営業利益はほぼゼロになります。
毎月15万円の利益しかないため、少し売上が下がるだけで赤字になる可能性があるのです。
9-2.月商500万円の飲食店
次に、月商500万円の居酒屋を想定します。
月間固定費:250万円
変動費率:40%
限界利益率:60%
損益分岐点は約416万7,000円です。
月商500万円では50万円の営業利益を確保できますが、月商400万円では10万円の営業赤字になります。
つまり、この店舗では月商417万円前後が重要な判断ラインです。
9-3.月商1,000万円の飲食店
次に、月商1,000万円の大型居酒屋や焼肉店などを想定します。
月間固定費:550万円
変動費率:35%
限界利益率:65%
損益分岐点は、
550万円÷65%=約846万2,000円
となります。
月商1,000万円なら、
変動費:350万円
固定費:550万円
営業利益:100万円
です。
しかし、月商850万円まで減少した場合、
変動費:297万5,000円
固定費:550万円
営業利益:2万5,000円
となります。
月商850万円でも、営業利益はわずか2万5,000円です。
そこから借入利息や法人税等の負担も考慮する必要があります。
月商1,000万円を売り上げる店舗であっても、売上15%減少によって利益がほぼ消える場合があるのです。
第10章|飲食店の経営を圧迫する5つの大きな原因
飲食店が赤字になる原因は、単純な売上不足だけではありません。
売上と経費のバランスが崩れることによって、経営が悪化するケースがあります。
10-1.① 家賃が高すぎる
飲食店経営において、家賃は重要な固定費です。
一般的に家賃比率10%前後を一つの管理目標とする考え方がありますが、適正な比率は業態や立地によって異なります。
例えば、月商300万円で家賃30万円なら、家賃比率は10%です。
しかし、同じ店舗で売上が200万円に減少すると、家賃比率は15%へ上昇します。
さらに売上が150万円になれば、家賃比率は20%です。
家賃の金額が変わらなくても、売上減少によって負担割合が大きくなるのです。
特に名古屋市中区栄、錦三丁目、名駅周辺などでは、立地条件に応じて店舗賃料が異なります。
店舗契約時には、売上が計画を下回った場合でも支払える家賃かを確認することが大切です。
10-2.② 人件費が売上に見合っていない
飲食店では、人件費が大きな経費となります。
例えば、月商500万円に対して人件費150万円なら、人件費率は30%です。
しかし、売上が400万円へ減少し、人件費が150万円のままであれば、人件費率は37.5%になります。
売上が減少したにもかかわらず、人件費が変わらなければ、利益率は大幅に悪化します。
ただし、安易に従業員を減らせばよいというわけではありません。
人員不足によって接客品質や料理提供速度が低下すれば、さらに売上が減少する可能性があります。
時間帯別売上、客数、従業員の配置状況を確認し、適正な人員計画を立てることが重要です。
10-3.③ 食材原価率が上昇している
食材価格の上昇も、飲食店の利益を圧迫します。
例えば、月商500万円で食材原価率30%なら、毎月の食材費は150万円です。
原価率が35%へ上昇すると、食材費は175万円となります。
毎月25万円の負担増です。
年間では300万円になります。
販売価格を変更できなければ、ほかの条件が同じ場合、利益は年間300万円減少します。
食材原価の上昇に対応するためには、仕入れ先の見直し、メニュー価格の改定、食材ロスの削減などを検討する必要があります。
10-4.④ 借入返済が重い
飲食店の開業では、内装工事や厨房設備の購入に多額の資金が必要になることがあります。
例えば、毎月30万円の借入返済を行っている店舗では、年間360万円の現金支出が発生します。
ここで注意したいのは、借入元本返済は原則として損益計算書上の費用にならないということです。
営業利益が出ていても、借入元本返済によって手元の現金が減少する場合があります。
利益と資金繰りは別々に確認する必要があります。
10-5.⑤ 売上減少を放置してしまう
飲食店の経営悪化で特に注意したいのが、売上減少に気づいても十分な対策を取らないことです。
「来月になれば売上が戻るだろう」
「年末になれば忙しくなるはず」
「もう少し我慢すれば状況が良くなる」
このように考えている間にも、家賃や人件費などの支払いは続きます。
一時的な売上減少なのか、構造的な経営悪化なのかを冷静に判断することが重要です。
第11章|飲食店が赤字になったら何から改善するべき?
赤字になったからといって、直ちに閉店を決断する必要があるとは限りません。
まずは経営状況を正確に把握し、改善できる部分がないか確認することが大切です。
11-1.最初に損益分岐点を確認する
例えば、月商300万円で毎月20万円の営業赤字が発生しているとします。
この店舗の限界利益率が60%なら、営業損益を20万円改善するためには、
20万円÷60%=約33万3,000円
の追加売上が必要です。
つまり、ほかの固定費が変わらない場合、月商約333万3,000円で営業赤字を解消できる計算です。
しかし、実際にその売上を達成できるかどうかは別問題です。
客席数、客単価、営業時間、周辺需要などを考慮して判断する必要があります。
11-2.メニュー価格を見直す
飲食店では、長年価格を据え置いているケースがあります。
しかし、食材費や人件費などが上昇している場合、販売価格の見直しが必要になることがあります。
例えば、月商300万円の店舗が、販売数量を維持したまま平均価格を5%引き上げられれば、月商315万円となります。
売上は15万円増加します。
追加費用が発生しなければ、利益改善につながります。
ただし、値上げによって客数が減少する可能性もあるため、価格改定は慎重に検討する必要があります。
11-3.利益率の高いメニューを強化する
飲食店では、売上の多い商品が必ずしも利益を多く生み出しているとは限りません。
例えば、売価1,000円で原価400円の商品なら、粗利益は600円です。
一方、売価1,500円で原価450円の商品なら、粗利益は1,050円です。
もちろん、調理に必要な人件費や提供時間なども考慮する必要があります。
重要なのは、商品ごとの売上だけでなく、粗利益額や販売数量を分析することです。
11-4.営業時間と人員配置を見直す
売上が少ない時間帯に多くのスタッフを配置していれば、人件費負担が大きくなる可能性があります。
時間帯別の売上を把握し、適正な人員配置を行うことが大切です。
ただし、従業員の労働条件や安全、接客品質を犠牲にするような削減は避ける必要があります。
11-5.家賃減額交渉を検討する
家賃負担が重い場合には、貸主に賃料の減額を相談する方法もあります。
例えば、家賃50万円を45万円へ減額できれば、毎月5万円、年間60万円の固定費削減につながります。
ただし、減額には貸主との合意が必要であり、必ず認められるわけではありません。
また、賃貸借契約の内容によって法的な取扱いが異なるため、必要に応じて専門家へ相談することが望ましいでしょう。
第12章|飲食店の経営改善で最も重要なのは「現金がいつまで持つか」
飲食店の経営では、利益と同じくらい重要なのが資金繰りです。
損益計算書上では黒字でも、現金が不足すれば事業を継続することが難しくなります。
12-1.毎月30万円の現金流出なら?
例えば、預金残高が300万円の飲食店を想定します。
毎月の営業活動や借入返済などによって、現金が30万円ずつ減少している場合、
300万円÷30万円=10か月
となります。
単純計算では、10か月で預金残高がなくなることになります。
もちろん、実際には売上や費用が変動するため、必ず10か月で資金が尽きるわけではありません。
しかし、現金の減少が続いているのであれば、早急に対策を検討する必要があります。
12-2.閉店するにもお金が必要
飲食店では、閉店を決断したからといって、すぐに支払いがなくなるわけではありません。
賃貸借契約の解約予告期間に相当する賃料や、原状回復工事費用などが発生する場合があります。
例えば、以下のような店舗を想定します。
月額家賃:50万円
解約予告期間:6か月
原状回復工事費用:200万円
仮に営業終了後も6か月分の賃料負担が必要であり、原状回復費用200万円が発生するとすれば、
賃料負担:300万円
原状回復費用:200万円
合計:500万円
という計算になります。
ただし、これは仮想事例です。
実際の支払額は解約通知の時期、営業終了日、契約条件、貸主との合意内容などによって異なります。
閉店費用を把握せずに赤字営業を続けてしまうと、最終的に退去費用を確保できなくなる可能性があります。
12-3.資金が残っているうちに経営判断をする
飲食店が赤字になった場合、改善できる可能性があるかどうかを検討することは大切です。
しかし、改善策に時間がかかる場合には、その間の現金流出も考えなければなりません。
例えば、毎月30万円の現金流出が続き、改善まで6か月必要なら、その間に180万円の資金が減少する計算です。
改善によって十分な利益を確保できる見込みがあるのか。
改善までの資金が足りるのか。
仮に改善できなかった場合、閉店費用を確保できるのか。
これらを確認したうえで経営判断を行うことが重要です。
第13章|飲食店は何か月赤字が続いたら閉店するべき?
飲食店オーナー様から相談されることがあるのが、赤字が続いた場合の撤退判断です。
しかし、「3か月赤字なら閉店」「半年赤字なら危険」といった一律の基準はありません。
13-1.一時的な赤字と構造的な赤字を分ける
飲食店では、季節や天候、周辺環境などの影響によって、一時的に売上が減少することがあります。
そのため、1か月だけ赤字になったからといって、必ずしも経営が危険とは限りません。
一方、毎月の売上が損益分岐点を下回り、改善の見通しが立たない場合には注意が必要です。
特に、家賃や人件費などの固定費が高く、売上増加が難しい店舗では、構造的に赤字が続く可能性があります。
13-2.撤退判断で確認したい5つの項目
① 現在の現預金残高
毎月の支払いに対応できる資金がどれだけあるのか。
② 毎月の現金増減
会計上の利益だけでなく、実際にいくら現金が増減しているのか。
③ 損益分岐点との差
黒字化するために必要な売上増加が現実的なのか。
④ 借入返済と税金の納付予定
金融機関への返済や消費税などの納税に対応できるのか。
⑤ 閉店に必要な資金
原状回復費用、解約予告期間の賃料、従業員関係費用などを支払えるのか。
これらを確認することが、冷静な経営判断につながります。
第14章|赤字の飲食店でも居抜き売却できる?経営状況が悪くても可能性はある
飲食店の経営が厳しくなった場合、居抜き売却という選択肢があります。
居抜き売却とは、店舗に残っている内装、厨房設備、空調設備、什器などを、次の出店希望者に譲渡する方法です。
店舗の経営状態が赤字であっても、設備や立地などに価値があれば、居抜き売却が成立する可能性があります。
14-1.赤字店舗でも価値がある場合
例えば、月商300万円で赤字が続いている居酒屋があったとします。
現在の経営者にとっては利益が出ない店舗でも、次の出店希望者が異なる業態で営業すれば、収益性が改善する可能性があります。
また、厨房設備や内装を引き継ぐことで、新規開業に必要な初期投資を抑えられる場合もあります。
つまり、赤字店舗だからといって、店舗の造作に価値がないとは限りません。
14-2.造作譲渡代金を受け取れる可能性
例えば、造作譲渡価格300万円で売却できた場合、その代金を借入返済や閉店費用などに充当できる可能性があります。
ただし、造作譲渡価格は立地、設備の状態、賃貸条件、買主の需要などによって変わります。
また、仲介手数料や税金、設備撤去費用などが発生する場合もあります。
300万円の譲渡価格が、そのまま最終的な手残りになるわけではありません。
14-3.原状回復費用を削減できる場合もある
飲食店の賃貸借契約では、退去時にスケルトン状態へ戻す義務が定められている場合があります。
しかし、次の出店希望者が既存の設備を引き継ぎ、貸主が原状回復義務の免除などに合意すれば、工事費用を削減できる可能性があります。
例えば、原状回復工事費用300万円が必要だった店舗で、その負担を回避できれば、閉店時の資金負担を大きく減らせます。
ただし、居抜き売却が成立しただけで原状回復義務が自動的になくなるわけではありません。
貸主との合意や賃貸借契約の確認が必要です。
第15章|赤字が続く飲食店こそ、営業中の居抜き売却を検討する価値がある
飲食店の居抜き売却は、閉店してからでなければ相談できないわけではありません。
営業中の店舗でも、売却に向けた相談や募集を行うことは可能です。
15-1.営業中に売却を検討するメリット
営業中の店舗では、厨房設備や空調設備などを実際に使用している場合が多く、買主が設備の状態を確認しやすいことがあります。
また、店舗内装が維持されているため、次の出店希望者が開業後のイメージを持ちやすい場合もあります。
もちろん、営業中だから必ず高く売れるというわけではありません。
設備の状態、立地、契約条件、譲渡価格などによって判断が変わります。
15-2.従業員やお客様に知られずに相談できる?
営業中の店舗を売却する場合、従業員やお客様に情報が広まることを心配する経営者もいます。
そのため、募集方法や内覧日時、情報公開範囲などを慎重に調整する必要があります。
ただし、秘密保持を完全に保証できるわけではありません。
また、貸主への相談や承諾が必要になる場合もあります。
店舗の営業状況に配慮しながら、適切な方法で進めることが大切です。
15-3.居抜き売却は時間に余裕がある方が有利な場合もある
居抜き売却では、買主の募集、内覧、条件交渉、貸主の審査、契約手続きなどが必要になることがあります。
そのため、相談した直後に売却が決まるとは限りません。
資金繰りが限界になってから売却を検討すると、希望条件で交渉する余裕が少なくなる可能性があります。
早い段階で売却の可能性を把握しておくことは、経営者が選択肢を確保するうえで重要です。
第16章|飲食店の売上と閉店判断に関するよくある質問Q&A
Q1.飲食店は月商300万円あれば大丈夫ですか?
月商300万円だけでは判断できません。
家賃、人件費、食材原価、その他の経費によって黒字になる場合も赤字になる場合もあります。
Q2.飲食店で月商500万円はすごいですか?
店舗の規模や業態によって評価が異なります。
月商500万円でも利益率が2%なら、営業利益は10万円です。
重要なのは売上だけではなく、利益率と資金繰りです。
Q3.月商1,000万円でも赤字になりますか?
はい。
売上1,000万円に対して経費が1,000万円を超えていれば、営業赤字になります。
大型店舗では家賃、人件費、設備費などの負担が大きい場合があります。
Q4.飲食店の損益分岐点はどう計算しますか?
基本的には、固定費を限界利益率で割って計算します。
限界利益率は、売上から変動費を差し引いた限界利益の割合です。
Q5.飲食店は何%売上が減ると潰れますか?
すべての飲食店に共通する数字はありません。
固定費、変動費率、現預金残高、借入返済などによって異なります。
また、損益分岐点を下回ったからといって、直ちに倒産するわけではありません。
Q6.赤字が3か月続いたら閉店するべきですか?
赤字期間だけで判断することは適切ではありません。
今後の改善見通し、資金繰り、閉店費用などを総合的に確認する必要があります。
Q7.借金が残っていても居抜き売却できますか?
借入金が残っていることだけを理由に、居抜き売却が必ず不可能になるわけではありません。
ただし、設備の所有権、担保、リース契約などによって譲渡できない設備がある場合もあります。
契約内容を確認することが重要です。
Q8.飲食店を閉店すると必ずスケルトン工事が必要ですか?
必ず必要とは限りません。
賃貸借契約の内容や貸主との合意によって異なります。
Q9.赤字の飲食店でも造作譲渡代金を受け取れますか?
可能性はあります。
赤字かどうかだけでなく、店舗の立地、設備、内装、賃貸条件などが重要になります。
Q10.営業中の飲食店を居抜きで売却できますか?
営業中でも相談や募集を行うことは可能です。
ただし、貸主の承諾や新たな賃貸借契約の成立などが必要になる場合があります。
第17章|飲食店オーナー様へ。売上を追い続けるだけが経営ではない
飲食店経営は、決して簡単な仕事ではありません。
毎日の仕入れ、仕込み、調理、接客、従業員管理、売上管理。
経営者は、さまざまな業務をこなしながら店舗を守っています。
しかし、どれだけ努力しても、立地や賃貸条件、原価構造などによって利益を確保することが難しい場合もあります。
そのようなときに大切なのは、売上の数字だけにとらわれないことです。
月商500万円を達成しても、経費を支払った後に利益が残らなければ、長期的な経営継続は難しくなる可能性があります。
反対に、月商300万円でも経費を適切に管理し、安定して利益を確保できれば、経営として十分に成立する場合があります。
飲食店を経営する目的は、単に売上を増やすことだけではないはずです。
お客様に喜んでもらいたい。
自分の料理を多くの人に届けたい。
従業員が安心して働ける環境を作りたい。
家族との生活を守りたい。
そのような想いがあって、飲食店を経営している方も多いでしょう。
だからこそ、売上だけでなく、利益と現金を大切にしていただきたいと考えています。
そして、経営改善が難しい状況になった場合には、無理に営業を続けることだけが正解ではありません。
店舗を閉店するという判断も、これまでの努力を否定するものではありません。
大切に使用してきた厨房設備や内装を、次の出店希望者へ引き継ぐことができれば、新たな価値につながる可能性があります。
飲食店経営で重要なのは、いくら売り上げたかだけではなく、いくら利益を残し、どれだけ安定した経営を続けられるかということです。
そして、状況に応じて適切な経営判断を行うことが、将来の選択肢を守ることにつながります。
後編まとめ|飲食店が潰れるかどうかは月商ではなく損益分岐点と資金繰りで判断する
今回の後編では、飲食店の売上減少が利益に与える影響、損益分岐点、経営改善、撤退判断、居抜き売却について解説しました。
月商300万円だから危険、月商500万円だから安心、月商1,000万円だから成功という単純なものではありません。
同じ売上でも、家賃、人件費、原価率、借入返済などによって経営状態は大きく変わります。
特に固定費が高い店舗では、売上が10〜20%減少しただけでも利益が大幅に減少し、赤字へ転落する場合があります。
また、営業利益が黒字でも、借入返済や設備投資などによって現金が不足する可能性があります。
そのため、飲食店の経営者は、損益分岐点と資金繰りの両方を把握することが重要です。
経営改善によって黒字化できる可能性がある場合には、売上対策や経費の見直しを行うことが大切です。
一方、改善の見通しが立たず、資金流出が続いている場合には、早めに今後の経営方針を検討する必要があります。
居抜き売却は、その選択肢の一つです。
飲食店で本当に大切なのは「月商いくら売ったか」ではなく、「いくら売れば利益が出るのか」、そして「最終的にいくら現金が残るのか」です。
名古屋で飲食店の売却・閉店・居抜き売却をお考えなら「居抜キング」へ
飲食店を経営していると、売上が思うように伸びなかったり、家賃や人件費の負担が大きくなったりすることがあります。
長年営業してきた店舗であっても、経営環境の変化によって、営業継続が難しくなる場合もあるでしょう。
しかし、閉店を考えたとき、必ずしも店舗の価値がなくなるわけではありません。
厨房設備、内装、空調設備、店舗の立地などは、次の出店希望者にとって価値となる可能性があります。
名古屋市を中心に飲食店の居抜き売却・店舗売却をサポートする「居抜キング」では、これまで培ってきた不動産業務の経験や人脈、WEBによる情報発信を活用し、飲食店オーナー様の大切な店舗を少しでも高く、少しでも早く売却できるよう尽力しています。
居抜き売却では、単に買主を探すだけでなく、貸主との調整、賃貸借契約の条件確認、造作譲渡契約、原状回復義務など、さまざまな確認が必要になります。
店舗の状況によっては、造作譲渡代金の回収や原状回復費用の削減につながる可能性があります。
「毎月の売上が減少している」
「損益分岐点を下回る月が増えてきた」
「家賃や人件費の負担が大きい」
「営業中のまま店舗を売却したい」
「閉店費用を少しでも抑えたい」
このようなお悩みをお持ちの飲食店オーナー様は、ぜひ居抜キングへご相談ください。
私たちは、飲食店オーナー様の立場に寄り添い、大切な店舗の価値を次の経営者へつなぐことを目指しています。
閉店は、必ずしも終わりではありません。店舗の価値を次の経営者へつなぐ、新たな選択肢にもなり得ます。