飲食店の廃業率について(最重要ポイント)
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日本の飲食業(宿泊業・飲食サービスを含む)での年間廃業率はおおむね 5〜6% 前後で、業種の中でも高めです(近年の調査)。2023〜2025年は倒産件数が増加しています。最新集計では、1年生存率は約80〜83%(=初年度の倒産は約17〜20%)、5年生存率は約30%前後、**10年生存率はおよそ8%程度**と参照されています(調査方法により差あり)。つまり 10 年後に残っている店は概算で 約1割以下。
1) 「近年の(日本の)状況」——数字で見ると
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中小企業庁などの統計や業界まとめでは、**宿泊業・飲食サービス業の年間廃業率は約5.6%**と報告され、開業率も高く「参入と退出の入れ替わりが激しい」業界です。(出典系記事のまとめは 2025 年頃のデータを参照しています。)
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帝国データバンクや東京商工リサーチなどの倒産集計では、2023〜2025 年にかけて飲食業の倒産件数が増加しており、2024〜2025 年度は過去最多水準になっている旨の報告があります。物価上昇・人件費高騰・資金繰り悪化が主因とされています。
補足:倒産件数(法的整理ベース)と「廃業(任意閉店)」は別集計です。倒産は負債規模や法的整理が条件なので、実際の閉店・廃業件数(小規模な店の閉店含む)はさらに多いと考えられます。
2) 10年営業できる確率(=10年生存率)はどれくらいか
複数の業界集計・分析を総合すると、
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1年目での閉店(失敗)は約17〜20%前後(→1年生存率 ≒ 80〜83%)。
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5年生存率はおよそ30%前後(業種や地域・業態で差が大きい)。
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10年生存率はだいたい 8% 前後
調査・推計の方法によって幅はありますが、このレンジが現実的な目安です。
(注)この「確率」は業態(ラーメン屋、居酒屋、カフェ、フランチャイズか独立か)、立地(繁華街か住宅地)、資本力、オーナーの経営経験などで大きく上下します。統計はあくまで「平均的な目安」です。
3) なぜ飲食店は廃業しやすいのか——主な要因
飲食店の廃業・失敗要因は複合的です。研究や業界報告を整理すると、主に次のような原因が繰り返し挙げられます。
A. 収益構造が薄い(薄利多売になりやすい)
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食材費・人件費・光熱費・家賃などの固定費が高く、売上が少し落ちるだけで黒字→赤字に転落しやすい。インフレや原材料高騰の影響を受けやすい点が致命的です。
B. キャッシュフローの脆弱性
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飲食は在庫回転は早いが初期投資(設備、キッチン什器、内装)がかかる。資金が少ないと運転資金が枯渇しやすく、季節変動や繁忙期偏重のため月ごとの収支変動が大きい。資金繰りで耐えられず閉店する店が多い。
C. 立地・競合の影響が大きい
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同じ業態でも数十メートル違うだけで集客が極端に変わる。出店判断ミスや過密立地だと採算が取れない。
D. 経営・マネジメントの弱さ
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「料理が上手=経営が上手」ではない。人材管理、原価管理、販促戦略、労務管理(人手不足対策)などの経営能力不足が原因で潰れるケースが多い、という学術的指摘があります。経営の経験不足や過信が短命化の一因です。
E. 人手不足・労務コストの上昇
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アルバイトの確保難、最低賃金上昇、シフト管理の負担増で人件費比率が悪化。人を雇えない・雇っても安定しないのは継続に大きな障害。
F. 消費者トレンドの変化・需要の読み違い
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食の嗜好や外食頻度が変わる(若年層の飲酒離れ、健康志向、デリバリ/テイクアウト需要の増加など)。ニーズを読み違えると客足が伸びない。
G. 外的ショック(パンデミック、景気・物価ショック)
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COVID-19 のような外的ショックで一気に売上が蒸発すると、経営基盤が脆弱な店舗は持ちこたえられない。2020 年のパンデミックで多数の店が閉店、また 2023〜2025 年は原材料高・光熱費高騰で再び圧迫されています。
4) 「よくある間違い」——よく聞く俗説について
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「飲食店は10年以内に90%が潰れる」はほぼ事実です。
5) 生存率を高めるための実務的ポイント
飲食店が長く残るために実務で効くポイントを挙げます(研究・業界報告と整合):
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資金繰り管理と余裕(運転資金の確保)。
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数字管理(原価率、人件費率、毛利、損益分岐点の把握)。
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立地とターゲットの明確化(顧客像に合ったメニュー・価格)。
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効率的な人員配置・業務標準化(マニュアル化・外注の活用)。
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柔軟な販促(デリバリー、テイクアウト、SNS を使った常時接客)。
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コスト上昇に備えた価格転嫁とメニュー改廃の仕組み。
参考(主要出典)
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中小企業・小規模事業者の現状/業界まとめ(飲食業の廃業率・開業率についてのまとめ)。
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帝国データバンク「飲食店の倒産動向(2025年上半期など)」 — 2023〜2025 年の倒産増加の報告。
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Datassential / 業界データ(初年度失敗率は過去に言われたほど高くない旨の分析)。
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業界まとめサイト・統計(10年生存率 ≒ 34% 等の集計)・Commerce Institute / Restroworks。
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学術研究「Why restaurants fail」など(経営・マネジメント要因の分析)。
最後に(結論)
飲食業は参入障壁が相対的に低く新規出店も多い一方で、収益構造の脆弱さ・外的ショック・経営管理の難しさが重なり「廃業しやすい」構造になっています。ただし経営の“やり方”次第で確率は大きく上がります。
数字管理、資金余裕、需要への柔軟な対応が最も重要です。